
ゲームを、完成させました。
たった一行ですが、これを書ける日が来るとは、正直思っていませんでした。
私は業務システムの開発を30年以上やってきました。COBOLに始まり、VB、VB.NET、C#、ASP.NET、Oracle、SQL Server——仕事のコードなら、いくらでも書いてきました。
その私が「自分のゲームを作りたい」と思い立ってから、何年も経ちます。その間ずっと、作りかけては捨て、別のものに手を出してはまた捨て……を繰り返してきました。一本も、完成しませんでした。
なぜ完成しなかったのか。そして、なぜ今回は完成したのか。今日は、その話をしたいと思います。
なぜ完成しなかったのか
今になって振り返ると、私の失敗には、はっきりした「型」が二つありました。
道具から入っていた
ひとつは、道具から入っていたことです。
「Unityがいいらしい」とUnityを触り、「いや、Unreal Engineの方が」とUnrealに移り、また戻る——エンジンの間を行ったり来たりしていました。
さらに、アセットストアで格好いいアセットを買っては、「これで何が作れるだろう」と考えていました。つまり、材料や道具が先にあって、そこからゲームをひねり出そうとしていたのです。

↑購入したアセットです
これは、順番が逆でした。本当は「どんなゲームを作りたいか」「自分はどんな仕組みなら作れるか」が先のはずなのに、「いい道具さえ見つければ、いいゲームが作れる」と思い込んでいました。道具は、いくら集めても、ゲームにはなりませんでした。
苦手なジャンルに挑んでいた
もうひとつは、苦手なジャンルに挑んでいたことです。
私が作ろうとしていたのは、たいていアクションゲームでした。けれどアクションは、あの「手触り」——ジャンプの気持ちよさ、当たりの爽快感——を作り込む職人技が要ります。
そしてそれは、私の得意なことではありませんでした。プロトタイプは動きます。でも、「面白い手触り」にはなりません。そこで力尽きて、また捨てる。その繰り返しでした。
間違った自己診断
そうして失敗を重ねるうち、私はこう思い込んでいました。
「自分には、ゲームを作る創造性が足りないんじゃないか」。
——これが、いちばんの間違いでした。
気づき
ある時、ふと気づきました。
足りなかったのは、創造性ではありませんでした。ただ、自分の強みと、作ろうとしていたものが、噛み合っていなかっただけでした。
私が本当に好きなのは、『信長の野望』や『三國志』のような、シミュレーションゲーム(SLG)です。そして——SLGの画面を思い浮かべて、はっとしました。
武将の能力値、領地の状態、毎ターンの内政や戦の処理。これは、私が30年以上やってきた業務アプリケーションと、そっくりそのまま地続きなのでは?と気づいた事でした。
マスタデータ、状態遷移、イベントロジック。SLGの画面は、業務システムの画面と、構造が似ていると気づいたのです。
つまり、私が「弱み」だと思っていたもの——「自分はゲーム開発の経験はなく、業務屋のシステム開発の頭しかない」という引け目が、SLGにおいては、そのまま強みでした。アクションでは足を引っ張っていたものが、SLGでは武器になるのです。
ジャンルを、自分の強みに合わせればよかった——ただ、それだけのことでした。
だから完成した——『三国志ミニ』
そうして作り始めたのが、『三国志ミニ』です。

魏・呉・蜀の三勢力、六つの領地。プレイヤーは蜀を率い、内政(農業・商業・徴兵)で国を富ませ、武将を率いて隣国を攻め、やがて天下を統一すれば勝ち——という、シンプルなSLGです。
今回は、ゲーム開発の進め方そのものも変えました。
まず、道具(アセット)からではなく、仕組みから入りました。「業務アプリと同じ構造のSLG」という、自分が理解できる仕組みを先に決めて作りこんでいきました。
ゲームエンジンも GODOT(C#)に思い切って変更しています。
GODOTは、ゲームの中身が人間にも読めるテキスト形式で保存されるので、その文章を直接読んで編集できる Claude Code と相性がよく、慣れたC#で書けるためでした。
道具は、ゲームに仕えるものになりました。
そして、開発が止まらないように、作り方も段階を踏みました。
プロトタイプ(面白さの核)→アルファ(一通り遊べる)→ベータ(本物の素材を入れる)→マスター(仕上げ)。
各段階で「ここまでできた」を確かめながら進めたので、途中で迷子にならずに済みました。
絵は、Niji Journeyでチビ武将を十五人ぶん描き起こしました。

背景は水墨画で、タイトル・勝利・敗北の三枚を揃えました。

音楽と効果音は、CC0(パブリックドメイン)の素材を使わせてもらいました。
(このあたりの作り方——Godotの構成、地図の仕組み、Niji武将絵のワークフロー、ライセンスの判断——は、それぞれ別記事で詳しく書くつもりです。)
完成という勝利

正直に書いておくと、このゲームはまだ完璧ではありません。終盤、国が大きくなると資源が膨らみすぎて、緊張感が緩む——そんなバランスの甘さが残っています。
合戦もとてもシンプルで一瞬で終わります。
それでも自分で作ったゲームで最後まで遊べるは感動でした。
「こんな簡単なことに、気づくのが遅すぎた」とも思ったりもしましたが、今となってはあの回り道は、無駄ではありませんでした。
UnityもUnrealも、買ったアセットも、捨てたアクションゲームも——全部、「自分の領分はここではない」と教えてくれる地図でした。さんざん遠回りして、ようやく、自分の領地にたどり着きました。
ゲームの中で蜀は天下を統一しましたが、私にとっての本当の天下統一は、一本のゲームを、最後まで完成させられたことです。
もし、あなたが昔、ゲームや何かの創作を作りかけて、途中で諦めた経験があるなら。そして「自分には才能がないんだ」と思っているなら。ちょっとだけ、疑ってみてください。
足りないのは才能ではなく、ただ「自分の強みに合うジャンルと、入り方」かもしれません。私が、そうだったように。
『三国志ミニ』は、下のリンクから遊べます。よかったら、触ってみてください。
初回起動時の警告について
ダウンロードして実行すると、「Windows によって PC が保護されました」という
青い警告が出ることがあります。これは、署名のない個人制作アプリで一般的に表示されるもので、
ゲーム自体に問題はありません。
起動するには:
- 警告画面の「詳細情報」をクリック
- 表示された「実行」ボタンを押す
これで通常どおり起動します。ご不安な場合は実行をお控えいただいて構いません。
