はじめに ── ファミコンの記憶から
4本目のゲームを作ろうと思ったとき、頭に浮かんだのは、子供の頃のゲームでした。
ファミスタ。ドラクエ。エキサイトバイク。
小学生から高校生のころが、いちばん夢中で遊んでいた時期です。大人になると仕事が忙しくなって、だんだん遠ざかってしまいました。
その中で、ひとつの場面がずっと残っていました。
エキサイトバイクの、空中の数秒
ジャンプ台から飛び上がって、バイクが宙に浮いている時間があります。
そのあいだ、私が何をしていたか。思い返すと——ほとんど何もしていませんでした。
着地の角度を合わせないと転んでしまうので、本当は操作しているはずです。でも記憶に残っているのは、「うわー」と眺めていた感じのほうでした。
体がふわっと浮いて、そのまま落ちていく。あの数秒を、作ってみたい。
そう思ったのが、今回の始まりです。
(最初はフリスビーで作ろうとしました。でも、どうしても「ふわっと」しませんでした。紙飛行機に変えたのは、途中からです)
まず、遊んでみてください
先に、できたものを置いておきます。
ダウンロードも、会員登録も要りません。このページのまま遊べます。 スマホでもどうぞ。
▶ 別の画面で大きく遊びたい方はこちら: https://gamelablog.com/games/kazemachi/
遊び方
- 画面を引っ張って、離すと、紙飛行機が飛びます
- 押している間だけ浮きます。 離すと沈みます
- オレンジの柱は上昇気流です。中に入ると持ち上がります
- 公園の端を越えたら、飛行機はもう戻ってきません
画面の上にある細い帯は、この先にある気流の場所と高さです。慣れてきたら見てみてください。
名前は「かぜまち」にしました。風を待つ、という言葉から取りました。もともとは、船が出発するために順風を待つことを指す言葉だそうです。
紙飛行機はできた。でも、おかしなことが起きた
作りはじめてしばらくして、上昇気流を入れました。
紙飛行機は、放っておけば落ちてきます。でも空には、暖まった空気が上に昇っていく場所があります。本物のグライダーは、それを見つけて乗ることで何時間も飛び続けます。
これを入れたら、1分ほど飛び続けるようになりました。
浮いて、沈んで、また浮いて。上下に波打ちながら、ゆっくり進んでいく。狙っていた「ふわっと」が、やっと出ました。
……ところが。
遊んでいるうちに、妙なことに気づきました。
何も操作しないのが、いちばん遠くまで飛ぶのです。
押せば浮きます。でも押すと、そのぶん遅くなる。遅くなると、また落ちる。結局、何もせずに滑空させておくのが、いちばん距離が伸びる。
これでは、ゲームになりません。プレイヤーがやることが、無いのですから。
何度調整しても、直りませんでした

そこから、ひたすら数字をいじりました。
① 浮く力を強くする
押したときに、もっと上がるようにしてみました。
→ 今度は、投げた瞬間に大きく舞い上がってしまいます。「ふわっと」ではなく、山なりの放物線になりました。
② 押したときの抵抗を減らす
押しても減速しにくくすれば、押す価値が出るはずです。
→ 少しは良くなりましたが、それでも「何もしない」を超えられません。
③ 上昇気流に「下端」をつける
低いところを飛んでいると気流に乗れないようにしました。高度を保つ理由を作ったのです。
→ これは効きました。でも差はわずかで、うまい人と何もしない人の差が、2割ほどしかありません。
④ 操作をこまかくする
押したり離したりが、いきなり最大・最小に切り替わっていたのを、じわじわ変わるようにしました。
→ 操作は楽しくなりました。でも距離は、やっぱり伸びません。
そして、理由が分かりました
何日か調整を続けたあとで、ようやく気づきました。これは直らない種類の問題でした。
このゲームでエネルギーを増やせるのは、上昇気流だけ
どんな操作をしても、空気抵抗でエネルギーは減る
↓
「遠くまで飛ぶ」が目的である限り、
何もしないのが、いちばん得
押して浮いても、それは速さを高さに変えただけです。あとで沈めば速さに戻りますが、その往復で、抵抗のぶんだけ損をします。
計算すれば、そうなるしかない。 どれだけ数字をいじっても、この結論は動きませんでした。
直すのは、物理ではなく「目的」でした

行き詰まって、子供の頃のことを思い出していました。
紙飛行機を飛ばしていたのは、公園でした。
そして、いつも少し不安でした。
「公園の外に出たら、もう戻ってこないんじゃないか」
……これだ、と思いました。
公園に、端をつけました
公園には、端がある
端より手前に降りれば成功。飛距離が記録になる
端を越えたら、飛行機は戻ってこない。記録なし
そして、端に近づくにつれて、上昇気流が消えていくようにしました。

何もしないと、半分も飛べなくなりました
目的が変わった瞬間、数字がひっくり返りました。
何もしない → 公園の半分ちょっとで落ちる
うまく気流を使う → 端まであと1%のところに降りられる
同じ物理のままです。 何ひとつ変えていません。
変えたのは、「遠くまで飛ぶ」から「ちょうどいいところに降りる」へという、目的のほうだけでした。
そして、欲張ると失敗します
最後の上昇気流で、どこまで上がるか。ここがこのゲームの勝負どころになりました。
上がりすぎる → 滑空が伸びて、公園の外へ → 飛行機を失う
上がらなすぎ → 手前で落ちる → 記録は伸びない
あと100m。 そこで越えてしまったときの悔しさは、なかなかのものです。
分かったこと
うまくいかないとき、まず数字を疑います。
強くする。弱くする。速くする。遅くする。 私も何日かそうしていました。
でも今回は、どれだけ数字をいじっても直りませんでした。
理由は単純で——目的が間違っていたからです。
「遠くまで飛ぶ」という目的の中では
何もしないのが正解だった
↓
だから、正解を変えるには
目的のほうを変えるしかなかった
数字は、目的の中でしか意味を持ちません。
目的がずれていると、その中でいくら最適な数字を探しても、ずれた場所での最適解にしかたどり着けない。今回、それを身をもって知りました。
これは、ゲームの話だけではないと思います
思い返せば、仕事でも似たことがありました。
処理が遅いから速くする。不便に思えたところをよかれと思って直してみる。数字を改善しているのに、誰も喜ばない。 そういうとき、たぶん測っているものが違っていたのだと思います。
調整しても直らないときは、そもそも何を良しとしているのかを疑ってみる。
今回いちばんの学びは、これでした。
おわりに

遊べるものが、4本になりました。
▶ https://gamelablog.com/games/
ブロック崩し、釣りゲーム、みずくばり、そして「かぜまち」。どれもダウンロード不要で、スマホでもそのまま遊べます。
最後に、ひとつだけ。
この問題を解いたのは、新しい知識でも、うまい調整でもありませんでした。
40年前、公園で紙飛行機を飛ばしていたときの、あの楽しさでした。
古い記憶が役に立つことも、あるようです。
