10本目のゲーム「すわかれ」を公開しました。
ミツバチの巣どうしが、花畑と木を取り合うゲームです。蜂が集めてきた蜜で巣を育てて、女王蜂が生まれたら、空いている巣へ引っ越して巣を増やします。最後は蜂を集めて相手の巣を攻めて、相手の巣をすべて占領したら勝ちです。
でも、このゲームは最初からミツバチのゲームだったわけではありません。最初は、三国志のようなゲームになってしまっていました。
今回は、三国志っぽさからミツバチに変わるまでの話を書きます。
最初は、三国志のようなゲームでした
私がシミュレーションゲームを好きになったきっかけは、光栄(いまのコーエーテクモゲームス)の「信長の野望」と「三国志」です。
その中でいちばん楽しかったのは、戦っているときではありませんでした。国を豊かにしているときです。田んぼを広げたり、町を栄えさせたりして、国がだんだん強くなっていく。それを見ているのが好きでした。
なので、10本目はそういうゲームにしようと決めました。
- 地図は、六角形のマスを並べたもの
- マスの上に拠点があって、拠点のまわりに農地が広がる
- 農業を上げると農地が広がり、商業を上げると兵士が増える
- 兵士で相手の拠点を攻めて、取り合う
拠点の名前は、仮にではありましたが「呉」と「魏」にしていました。三国志に出てくる国の名前です。
作ってみたら、三国志14にそっくりでした

少しずつ作って、遊べる形になってきたころです。画面を見ていて、はっとしました。
三国志14にそっくりだったのです。
三国志14は、コーエーテクモゲームスが2020年に出したゲームです。六角形のマスが並んだ大きな地図で、国ごとにマスの色が塗り分けられています。内政では農業や商業を上げます。
私のゲームも、六角形のマスが並んでいて、勢力ごとに色が塗り分けられていて、農業と商業を上げて、拠点の名前は呉と魏。誰が見ても、三国志14を思い起こす画面になっていました。
まねをしようと思ったわけではありません。好きなゲームのことを考えながら作っていたら、知らないうちに近づいていたのだと思います。
仕組みはそのままで、見た目と言葉だけ替えました

どうしようかと考えたとき、ヒントになったのは、あるレースゲームでした。遊び方は有名なレースゲームとよく似ているのに、走っているのが犬になっていまして、まったく別のゲームに見えるたのです。
そこで、遊びの仕組みは変えずに、舞台だけを替えることにしました。いろいろ考えて、選んだのがミツバチです。
替えたのは、こんなところです。
| 三国志のころ | ミツバチにしたあと |
|---|---|
| 拠点 | 巣 |
| 兵士 | 蜂 |
| 農業(農地が広がる) | 巣作(巣の部屋が広がる) |
| 商業(兵士が増える) | 養蜂(蜂が増える) |
| 防御 | 守り |
| 呉・魏 | 巣A・巣B |
| 青と赤の地図 | 蜂蜜の金色と赤紫の地図 |
プログラムの中の仕組みは、ほとんどそのままです。それなのに、替えた画面を見て驚きました。まったく別のゲームになっていたのです。 三国志14を思い出すことは、もうありませんでした。
六角形に、理由ができました

ミツバチにして、いちばん良かったことがあります。
六角形のマスに、理由ができたのです。
ミツバチの巣は、六角形の部屋がたくさん並んでできています。なので、六角形のマスが並んだ地図は、そのまま大きな蜂の巣に見えます。
三国志のころは、「なぜ六角形なのか」を聞かれても、「戦略ゲームではよくある形だから」としか答えられませんでした。いまは「蜂の巣だから」と答えられます。
本物のミツバチの習性が、そのまま遊びになりました

ミツバチのことを調べていくと、ゲームの仕組みとぴったり合う習性がいくつも見つかりました。
盗蜂(とうほう) ミツバチは、ほかの巣へ蜜を盗みに行くことがあります。このゲームで相手の巣を攻めるのは、この「盗蜂」です。
蜂球(ほうきゅう) 日本のミツバチは、スズメバチが来ると、大勢で丸く取り囲んで、体の熱で倒します。このゲームでは、蜂を1か所に集めてから攻めることを「蜂球」と呼んでいます。
巣別れ(すわかれ) 巣が栄えると、新しい女王蜂が生まれます。すると、古い女王蜂が蜂の半分を連れて、新しい場所へ引っ越します。これを「巣別れ」と言います。このゲームで巣を増やせるのは、この巣別れだけです。
プロポリス ミツバチは、木から樹脂を集めて、巣のすき間をふさいで守ります。このゲームでは、樹木から集めた樹脂で、巣の「守り」が上がります。
三国志のころの仕組みを、そのまま蜂に置き換えただけのつもりでした。でも、本物の蜂も、ちゃんとそういう暮らし方をしていたのです。
豊かにしないと、広がれないゲームにしたかった
作っているあいだ、何度もぶつかった問題があります。
最初のころは、国を豊かにしなくても、兵士(蜂)をたくさん集めて攻めるのがいちばん強い形になっていました。私がいちばん好きな「国を豊かにする」ところが、いらなくなってしまうのです。
これを解決したのが、女王蜂でした。
女王蜂は、巣作と養蜂の両方を上げて、巣を豊かにしないと生まれません。そして、女王蜂がいないと、新しい巣を手に入れられません。 相手の巣を攻めて空っぽにしても、女王蜂を送りこまないと、自分の巣にはならないのです。
こうして、豊かにしないと広がれないゲームになりました。
計算の答えと、遊んだ感じが逆だったこと
このゲームでは、パソコンに自動で何百回も遊ばせて、どのやり方が強いかを計算で確かめています。
ところがある時、計算の答えと、自分で遊んだ感じが逆になったことがあります。
計算では「蜂を少しずつ送って攻めるほうが強い」と出ました。でも実際に遊ぶと、蜂球で集めてから攻めないと、まったく勝てませんでした。
調べてみると、計算の中での自動の遊び方が、人が考えてのこととはちがう攻め方をしていたことが分かりました。最後に信じるべきなのは、自分で遊んだ感じだと、あらためて思いました。
遊んでみてください
スマホの方は、別のタブで開いてから横向きにしてください。
横長の画面なので、パソコンやタブレットで遊ぶのがおすすめです。
タイトル画面で「やさしい」と「ふつう」を選べます。はじめは「やさしい」がおすすめです。1回はだいたい15分くらいです。遊ぶたびに、ちがう地図になります。
「すわかれ」という名前
名前は、ミツバチの「巣別れ」からつけました。
このゲームでいちばん大事なのは、女王蜂が生まれて、新しい巣へ引っ越すところです。巣を豊かにして、巣別れして、広げていく。 それがこのゲームの遊びそのものなので、この名前にしました。
似てしまったら、替えればいい

好きなゲームがあると、作っているうちに、どうしてもそれに近づいていきます。今回の私が、まさにそうでした。
でも、似てしまったことに気づけたら、替えればいいのだと思います。
今回、仕組みはそのままで、見た目と言葉を替えただけで、まったく別のゲームになりました。そして、替えたおかげで、六角形の理由や、本物の蜂の習性という、三国志のころには無かったものまで手に入りました。
50代から始めたゲームづくりも、これで10本目です。好きなものから始めて、途中で気づいて、変えていく。そうやって、少しずつ自分のゲームになっていくのだと思います。
