5本目のゲーム「ころあい」を公開しました。
家庭菜園のシミュレーションです。ルールは簡単でトマトとニラとさつまいもを育てて、届いた注文どおりに納めます。1日にできるのは2回まで。水をやるか、収穫するか。それを決めたら次の日へ進みます。
作っていて一番悩んだのが、さつまいもでした。
トマトとニラは、見れば収穫時期が分かります。実の大きさが数字で出ているので、野菜の成熟の度合い60以上なら採れる、85(最大100)を超えると傷む、と分かったうえで「あと1日待つか、今日採るか」を決められます。
さつまいもは、そうはいきませんでした。土の中だからです。
見えないものを、どうやって決めるか

最初は、さつまいもにも数字を出そうかと思いました。そのほうが親切です。
でも、それだと嘘になります。実際の家庭菜園で、土の中のさつまいもの大きさが分かることはありません。掘るまで分かりません。
だから、見せないことにしました。
画面に出るのは、植えてからの日数と、地上に出ているツルの葉だけです。葉は育つにつれて増えていきます。手がかりはそれだけ。あとは掘ってみるまで分かりません。
書いていて思ったのですが、これは作物としての性質をそのまま持ち込んだだけで、私が考えた仕掛けではありませんでした。題材のほうに、もともと入っていたものです。
説明を書かないまま、自分で遊んでみた

さつまいもの採りごろについて、私はゲームの中に一行も説明を書きませんでした。書かないまま、自分で遊びました。
最初は、ひどいものでした。
大きく育てたくて待っていたら、13日目に熟れきって無くなりました。何も採れませんでした。それまでの十数日が全部消えたわけです。
次は早めに掘りました。今度は小さすぎて、注文の大きさに届きません。
そういうことを何度か繰り返しているうちに、だんだん見当がついてきました。13日より前に掘る。葉が5本になったあたりが良さそうだ。
そのうち、自分の中でルールができていました。
13日より前、葉が5本のときに掘る
誰にも教わっていません。ゲームの中にも書いてありません。掘った結果を記録する機能を付けようかとも考えたのですが、それも無いままです。何度か失敗しているうちに、勝手に身についていました。
これが作れたことが、今回いちばん嬉しかったところです。
さらに面白かったのは、そのあとに起きたことです。さつまいもの注文がいつ来るか分からないので、注文が来ていなくても先に育てて採っておこう、と考えるようになりました。備蓄です。誰にも言われていないのに、先を読んで動くようになっていました。
なぜ説明を書かなかったか
4本目に「かぜまち」という紙飛行機のゲームを作ったとき、覚えたことがあります。
先に全部説明すると、誰も読まない。
タイトル画面に遊び方を並べたくなるのですが、並べたところで読まれません。読まれないまま始まって、結局分からないまま終わります。
なので、ころあいのタイトル画面に書いたのは2つだけにしました。
- 野菜を育てて、注文どおりに納めます
- 水やりと収穫は、1日に2回まで
この2つは、知らないと始められません。目的が分からなければ何をしていいか分からないし、1日2回までという制限を知らないと、ボタンが押せなくなった理由が分かりません。
逆に、書かなかったのはこちらです。
- 成熟の度合いは60以上で採れる ── 注文に書いてあります
- 成熟の度合いが85を超えると傷む ── 一度失えば分かります
- さつまいもは見えない ── 掘れば分かります
一度失えば分かる、というのはひどい言い方に聞こえるかもしれません。でも、実際に私がそうやって覚えました。文字で読んだことより、実を落として覚えたことのほうが、はっきり残っています。
「考えたほうが得だ」を、数字で確かめた
ここまでは気持ちの話ですが、それだけでは作れません。
というのも、こういうゲームは油断すると「何も考えなくても同じ結果になる」ものになりがちだからです。実際、途中まではそうなっていました。
作物がトマト1つだけだった頃、いろいろな遊び方で何百回も自動で回して測ってみたところ、こうなりました。
- 何も考えずに即座に採る ── 平均6.2個
- 2つ先まで読んで水をやる ── 平均6.5個
差が0.3個しかありません。
先を読んでも読まなくても、ほとんど結果が変わらない。これでは考える意味がありません。プレイヤーが下手なのではなく、そもそも考える余地が用意できていなかったわけです。
そこで作物を3つに増やし、次の注文の予告を出すようにしました。そのうえで1000回まわして測り直したものが、こちらです。
| 遊び方 | 達成できた注文の数 |
|---|---|
| だらだら遊ぶ | 2.32 |
| 予告を見ない | 7.77 |
| 予告を見て、水を配る | 8.65 |
| 予告を見て、先に採って備える | 9.41 |
先を読むことの価値が、0.3から1.64に広がりました。全体の2割ほどです。
内訳も見ました。水をどう配るかで0.88、先に採って貯めておくことで0.76。どちらか一方ではなく、両方が効いています。
さつまいもの成功率も測りました。来るべき納品に備えない場合は46%、備えた場合は53%。確実にはなりません。土の中は見えないので、備えても外すときは外します。ただ、備えたほうが少しだけ勝てる。賭けとして成立しているところに落ち着きました。
数字を出すのは、業務システムを30年やってきた癖のようなものです。面白いかどうかは最後は自分の感覚で決めるしかありませんが、「考える余地があるかどうか」は測れます。測れるものは測ったほうが、迷わずに済みます。
遊んでみてください
ブラウザでそのまま遊べます。ダウンロードも会員登録も要りません。スマホでもどうぞ。
5本目にして、初めて

最後に、自分の話を少しだけ書かせてください。
これまで4本作ってきて、毎回同じところでつまずいていました。
釣りゲーム ── 引きの手応えは面白いのに、ゲームになっていませんでした。あとから目標とお金の使い道を足しました。
みずくばり ── 線が伸びるだけで、終わりがありませんでした。あとからバケツと、行き詰まる形を足しました。
かぜまち ── 紙飛行機が永遠に飛べてしまいました。あとから公園の端を置きました。
3回とも、作ってから気づいています。手を動かして、遊んでみて、あれ、これゲームになっていないぞ、と気づく。それから直す。
今回は、企画の段階で気づきました。
家庭菜園を題材にしようと決めた日に、こう思ったんです。育てるだけだと、漠然とゲームをするだけになって、楽しさを見つけるのが難しくならないだろうか。三国志のような、中国統一みたいなはっきりした目的がないぞ、と。
それで、注文に応える形にしました。締切があるから、待つことに危険が生まれます。育てるだけなら、いつまでも待てばいい。期限があると、判断になります。
同じことに4回ぶつかって、5回目でようやく先に見えました。4回分かかっています。
50代から始めて、こんな速度です。それでも、前より少しは分かるようになってきました。
