はじめに ── 前回の続きです
前回、こんな記事を書きました。
「絵を1枚も描かずに、釣りゲームの『面白さ』だけを作ってみた」
魚は丸。釣り糸は線。糸にかかる力は棒グラフ。絵を1枚も使わずに、釣りの手ごたえだけを作った、という話です。
作ってみたら、これが面白かったのです。
魚が暴れているときに無理して巻けば、糸が切れる。かといってゆるめてばかりだと、逃げられてしまう。「今、巻いていいのか?」という迷いが、ちゃんと生まれていました。
でも。
面白いことと、ゲームであることは、別でした。
丸が動いて、線が伸びて、棒グラフが揺れる。たしかに手ごたえはあります。けれど、これを誰かに「遊んでみてください」と渡せるかというと、渡せません。
何かが足りないのです。
考えてみたら、足りないものは3つありました。
まず、遊んでみてください
先に、完成したものを置いておきます。
ダウンロードも、会員登録も要りません。このページのまま遊べます。
▶ 別の画面で大きく遊びたい方はこちら: https://gamelablog.com/games/fishing/
遊び方
- 画面をタップ(クリック)すると、エサを投げます
- 魚が掛かったら、押している間だけ糸を巻きます
- 指を離すと、糸がゆるみます
- 押したまま指を左右にずらすと、竿の向きが変わります
魚が左に走っているとき、竿を右に向けると「いなす」ことができます。糸が切れにくくなりますが、その間は魚が近づいてきません。
目標は、この海の「ぬし」を釣り上げることです。
足りなかったもの① ── 目標

前回のプロトタイプには、終わりがありませんでした。
魚が掛かる。引き合いをする。釣れる。また魚が掛かる。……それだけです。
手ごたえはあります。でも、遊んでいるうちにこう思うのです。
「これ、いつまでやればいいんだろう」
10匹釣ればいいのか。100匹なのか。何も決まっていないので、どこで満足していいのか分かりません。面白いのに、やめどきが分からない。 これは意外としんどいものでした。
そこで、目標をひとつ置きました。
この海の「ぬし」を釣り上げる。
ぬしというのは、その場所にすみついた、特別に大きくて手ごわい魚のことです。今回はクエという魚をぬしにしました。普通の魚よりずっと長く粘り、あばれ続けます。
たった一行のルールですが、置いた瞬間に、ゲームが変わりました。
途中のすべてが、意味を持ちはじめたのです。
- 小さい魚を釣る → ぬしに挑むためのお金になる
- 道具を買う → ぬしに勝つために必要になる
- 大きい魚に負ける → まだ道具が足りないと分かる
それまでは「ただ魚を釣っていた」のが、「ぬしに近づいている」に変わりました。
やっていることは、まったく同じなのに、です。
足りなかったもの② ── お金の使い道

次に足したのは、道具でした。
魚を釣るとお金がもらえて、そのお金で竿とリールが買えます。良い竿は糸が切れにくくなり、良いリールは魚をいなしやすくなります。
これで「お金を貯めて、強くなる」という流れができました。よし、と思ったのですが。
すぐに行き詰まりました。
竿とリールは、一度買ったらそれっきりです。2回買い物をしたら、もう買うものがありません。
そこから先は、魚を釣ってもお金が増えるだけ。使い道がない。数字が大きくなるだけで、何も嬉しくないのです。
釣りは相変わらず面白い。でも、続ける理由がありませんでした。
そこで、消耗品を入れることにしました。エサです。
- ミミズ(無料・なくならない)── 小さい魚が中心。これだけでもずっと遊べます
- ゴカイ(安い)── 中くらいの魚がよく釣れます
- 活きエビ(高い)── 大物がよく来ます
エサは投げるたびに減ります。だから、お金がずっと必要になります。
これを入れた瞬間に、輪がつながりました。
釣る → お金が貯まる → 良いエサを買う → 大物を狙う → 釣る
そして、思わぬ効果もありました。
プレイヤーが「よし、今から大物を狙うぞ」と決められるようになったのです。
それまでは、大物が来るのをただ待つだけでした。今は、高いエサを買えば自分から挑みにいけます。お金を払って、糸を切られれば、そのエサ代は消えます。その悔しさも含めて、面白くなりました。
ひとつだけ、気をつけたことがあります。
無料のエサは、絶対になくならないようにしました。 お金がゼロになっても、ミミズで小さい魚を釣って稼ぎ直せます。行き止まりを作らないためです。
足りなかったもの③ ── ごほうび

最後に足りなかったのは、釣れた瞬間の嬉しさでした。
苦労して大物を寄せきったのに、画面に「釣り上げた」と文字が出るだけ。これでは、せっかくの達成感が続きません。
やはり、魚の絵が要ります。
そこで絵を用意することにしたのですが、ここで悩みました。戦っている間の魚も、絵にするべきだろうか。
魚は暴れます。左に走り、右に切り返し、体を傾けます。これを絵でやろうとすると、1匹につき何枚ものパラパラ漫画が必要です。18匹分となると、気が遠くなります。
しばらく考えていて、ふと気づきました。
そもそも、戦っている間の魚は、水の中にいます。
見えなくて当然なのです。
姿が見えないまま、引きの強さと動き方だけで「なんだこれは、大きいぞ」と推測する。それこそが釣りではないか、と。
そこで、こう決めました。
戦っている間は、影のまま。釣り上げた瞬間だけ、絵を見せる。

これで、絵は1匹につき1枚で足りるようになりました。しかも、水面から上がってきて初めて姿が分かるという、釣りらしい順番になりました。
「絵が足りない」という困りごとが、「水の中だから見えない」という演出に変わったのです。
分かったこと

今回足したのは、この3つでした。
- 目標 ── どこを目指すのか
- お金の使い道 ── なぜ続けるのか
- ごほうび ── 何が嬉しいのか
並べてみて気づいたのですが、この3つはどれも「面白さ」そのものではありません。
引きの駆け引きは、前回の時点でもう完成していました。今回足したのは、その面白さを回し続けるための仕組みです。
車にたとえるなら、エンジンは前回できていたのです。でも、ハンドルもタイヤもガソリンタンクもなかった。エンジンだけでは、走れませんでした。
前回の記事で分かったのは、こうでした。
絵より先に、面白さを作る
今回、その続きが分かりました。
面白さができたら、次は「続ける理由」を作る
ゲームが完成しないとき、原因は「面白くないからだ」と思いがちです。でも今回の私は逆でした。面白いのに、ゲームになっていなかった。 足りなかったのは、面白さではなく、その周りだったのです。
おわりに

18種類の魚がいます。道具は竿とリールが2段階ずつ、エサが3種類。そして、この海のぬしがいます。
私の腕では、良い道具をそろえて、やっと勝てるくらいの相手です。よければ、挑んでみてください。
上のゲームは、スマホでもそのまま遊べます。指1本で操作できるように作りました。
まだ直したいところはたくさんあります。文字が少し小さいこと。魚の絵で気に入っていないものが何匹かいること。図鑑の画面を作れていないこと。少しずつ直していくつもりです。
でも、ひとまず「遊べるもの」になりました。
丸と線だけだったものが、ここまで来ました。
