はじめに ── 昔作った釣りゲームを、作り直そうとした
何年か前に、釣りゲームを作ったことがあります。
オンラインレッスンの教材として使ったものです。魚が179種類いて、図鑑があって、お店で釣り竿を買えて。今から思えば、なかなか本格的なものでした。
前回、ブラウザで動くブロック崩しを作りました。そのとき、こう思ったのです。
「あの釣りゲームも、ブラウザで遊べるようにしたいな」と。
そこで、まず何から始めたか。
魚の絵を用意しようとしました。
179種類の魚。それを揃えるところから始めよう、と。
——これが、間違いでした。
絵で行き詰まった

まず、昔使っていた魚の画像を見てみました。
ところが、その絵がどこから来たものなのか、分からなかったのです。何年も前のことで、記録が残っていませんでした。
出どころが分からないものは、使えません。新しく用意するしかない。
そこで、AIで絵を作ってみることにしました。
最初に試したのは、昔の図鑑のような絵です。細い線で描かれた、少し古めかしい魚。出てきた絵は、なかなか雰囲気がありました。
でも、問題がありました。
小さくすると、何の魚だか分からないのです。
ゲームの中で魚が表示されるのは、そんなに大きくありません。細い線と淡い色は、小さくすると真っ先に消えてしまいます。40種類並べたら、全部「灰色っぽい魚」になってしまう。
それなら、と。もっとはっきりした色の絵をお願いしてみました。
出てきたのは、錦鯉でした。
……そこで、手が止まりました。
「もう、中止にしようかな」
正直、そう思いました。作り始める前から、絵の準備でつまずいている。またここで終わるのか、と。
気づいたこと ── そもそも、面白かったのか?

手が止まったので、少し考えました。
昔作った釣りゲームを、思い返してみたのです。
あのゲーム、どうやって釣っていたか。
糸をたらす
↓
魚が通りかかる
↓
釣れる
↓
巻き上げる
……これだけでした。
魚が通ったら、釣れる。あとは巻くだけ。プレイヤーがやることが、ほとんどありません。
図鑑を埋めていくのは、確かに楽しかったのです。179種類も集められるのですから。でも、釣ること自体は、単調でした。
そこで、はっと気づきました。
絵を用意する前に、確かめるべきことがあったんじゃないか。
魚の絵を179枚揃えたとして。その後で「やっぱり釣りがつまらない」と気づいたら、どうなっていたでしょう。絵を描いた時間が、全部むだになります。
順番が、逆だったのです。
円と線だけで作ってみた

そこで、いったん絵のことは忘れることにしました。
代わりに、こういうものを作りました。
- 魚 → 丸
- 釣り糸 → 線
- 糸にかかる力 → 棒グラフ
絵は、1枚も使っていません。図形だけです。

見た目は、まったくゲームらしくありません。でも、これで十分でした。確かめたかったのは、見た目ではなく「釣りが面白いか」だけだったからです。
操作も、思いきり単純にしました。
押している間は、糸を巻く。指を離すと、ゆるめる。
それだけです。スマホなら、親指1本。ボタンもありません。
ルールはこうです。
- 巻けば、魚が近づく。でも糸にかかる力が強くなる
- 力が強くなりすぎると、糸が切れる
- ゆるめれば安全。でも、魚は逃げていく
つまり、「今、巻いていいのか?」を、ずっと迷い続けることになります。
魚が暴れているときに無理に巻けば、糸が切れる。かといって、ゆるめてばかりでは釣れない。
この「迷い」が作れるかどうか。それが、今回いちばん確かめたかったことでした。
3回作り直した

さて、ここからが本題です。
実際のプログラムは、AI(Claude Code)に作ってもらいました。私がやったのは、「こういうものを作ってほしい」と伝えることと、できたものを実際に遊んでみることです。
最初にできたもの
まず、押したら巻く、離したらゆるめる。それだけのものができました。
遊んでみると、たしかに緊張感はありました。糸が切れそうでハラハラします。
でも、何かが違うのです。しばらく遊んで、こう思いました。
「これ、重い物を引き上げているだけだな」
魚を釣っている感じがしないのです。理由を考えてみて、気づきました。
魚は、まっすぐ上がってきません。 左に逃げ、右に逃げ、下に潜ろうとします。そこがないから、ただの重い荷物に感じたのです。
そこで、AIにこう伝えました。「魚が逃げる方向を作りたい。逃げる方向と逆に竿を向けると、うまくいなせる、というのはどうでしょう」と。
1回目の失敗 ── 速すぎて間に合わない
できたものは、こうでした。
魚が逃げる直前に、矢印が出る。左の矢印が出たら、右にマウスを動かす。それで魚をいなせる。
遊んでみました。
まったく間に合いませんでした。
矢印がパッと出て、パッと消える。見てから手を動かしていたのでは、とっくに終わっています。しかも、うまくできたのかどうかも分かりません。
これは「反射神経のゲーム」になってしまっていました。私が作りたかったのは、そういうものではありません。
2回目の失敗 ── 振り子みたいだ
そこで、考え方を変えました。
「矢印を見て反応する」のではなく、「魚が引っぱっている方向に、ずっと竿を合わせ続ける」。綱引きのようなイメージです。
これをAIに伝えて、作り直してもらいました。
今度は、だいぶ良くなりました。でも、また違和感がありました。
魚が、振り子みたいに左右に揺れるのです。
行ったり来たり、行ったり来たり。速すぎて追いつけません。そして何より、魚に見えませんでした。
そこで、こう伝えました。
「魚は、こんなふうに揺れないと思うんです。左にしばらく走って、粘って、それから急に向きを変える。そういう動きにできませんか」
3回目 ── 「魚を釣っている感じ」
作り直してもらったものを遊んで、思わず声が出ました。
急に、魚になったのです。
左に走って、しばらく粘る。こちらは竿を右に向けて、じっと耐える。すると急に向きを変えて、右へ走り出す。あわてて竿を戻す。
弱ってきたところで、一気に巻く。でも欲を出しすぎると、糸が切れる。
まさに、釣りでした。
そして初めて、いちばん大きな魚を釣り上げることができました。
何度でも、やり直せた
ここで大事なことがあります。
3回作り直しましたが、どれも大変ではありませんでした。
なぜなら、丸と線しかないからです。絵を用意していたら、そうはいきません。「魚の動き方を変えたい」と思うたびに、絵の描き直しになっていたかもしれません。
図形だけだったから、気軽に「作り直してみましょう」と言えたのです。
分かったこと

今回、2つのことが分かりました。
① 面白さは、絵では作れない
もし最初の予定どおり、魚の絵を179枚用意していたら、どうなっていたでしょうか。
きっと、見た目はきれいなゲームができたと思います。でも、釣ること自体は、昔と同じで単調なままだったはずです。
絵をどれだけ増やしても、面白くないゲームは面白くなりません。
逆に、丸と線しかなくても、面白いものは面白いのです。実際、今回のプロトタイプは絵が1枚もありませんが、遊んでいて楽しいです。
だから、順番はこうでした。
面白さ → 絵
私は何度もゲーム作りに挫折してきましたが、その原因のひとつは、これだったのかもしれません。いつも、絵や素材から集め始めていたのです。
② 作るのはAI、面白いか決めるのは自分
もうひとつ、大事なことがあります。
今回、プログラムはAIが書きました。私はほとんど書いていません。
でも、AIには分からなかったことがあります。
- 「矢印が速すぎて間に合わない」
- 「振り子みたいで、魚に見えない」
- 「左にしばらく粘ってほしい」
これは、実際に遊んでみた人にしか言えません。AIは実に速く、正確にプログラムを作ってくれます。でも、それが面白いかどうかは、遊んだ本人にしか分からないのです。
つまり、こういうことです。
プログラムが書けなくても、ゲームは作れる時代になりました。 でも「これは違う」と言えるのは、遊んだ自分だけです。
そしてこれは、プログラムの知識とは関係ありません。ゲームを遊んだことがある人なら、誰でもできることです
おわりに

まだ、丸と線だけのプロトタイプです。魚の絵も、背景も、音もありません。
でも、面白いということは確認できました。
だから、これから魚の絵を用意します。最初につまずいたところに、ようやく戻ってきたわけです。
ただ、気持ちはまったく違います。
面白いと分かっているゲームのために絵を描くのと、面白いか分からないゲームのために描くのとでは、まるで別の作業だからです。今なら、何十枚でも描ける気がします。
完成したら、このブログでそのまま遊べるようにするつもりです。
もし、あなたも何度かゲーム作りをあきらめたことがあるなら——
絵より先に、面白さから作ってみてください。
そして、うまくいかなかったら、AIに「ここが違う」と伝えてみてください。私は3回作り直して、やっと納得できるものになりました。1回でうまくいかなくても、それが普通なのだと思います。
ひとりでやっていたら、たぶん途中でやめていました。
