海女(あま)さんになって海に潜り、網で魚を捕るゲームを作りました。泳ぐと水に波紋が広がって、魚やサメに気づかれてしまいます。だから、そっと近づいて、ここだと思ったところで網を投げます。名前の「そろり」は、この「そろりそろりと近づく」から付けました。
今回の記事では、ゲームの中身と一緒に、作り方の話を書きます。11本作ってきて、やっと「この順番で作ればいい」というものが見えてきたからです。
作り方の順番
先に、その順番を書いておきます。
1. いちばん小さな試作を作って、触ってみる
2. ドット絵を入れる
3. ゲームの要素を追加で足していく
4. 効果音とタイトル画面を作る
5. 公開する
書いてみると当たり前の順番です。でも、この順番に落ち着くまでに10本かかりました。ここからは、「そろり」で実際に何が起きたかを、1段ずつ書いていきます。
いちばん小さな試作を作って、触ってみる

最初に作りたかったのは、宇宙で、無重力の中をフワフワ漂うゲームでした。そこに、前から作ってみたかった矢を放つ遊びを組み合わせました。
無重力の中で矢を放つと、矢は前へ飛び、自分は反動で後ろへ流されます。地面がないので、動く方法は矢を放つことだけ。そんな「部屋の中で矢を放って漂うだけ」の試作を作りました。
触ってみると、うまくいかないところがすぐに見つかりました。
- 宇宙では、体がくるくる回るので、引く強さの加減が難しい
- 水の中にしてみると、すぐに底へ沈んでしまう
でも、この「水の中」を触っているうちに、案が浮かびました。海に潜って、魚を捕るのはどうだろう。 矢は少しかわいそうなので、網にしました。
そこから、魚との駆け引きを考えました。魚は前を見ている。こちらが泳ぐと水に波紋が広がり、それが魚の目に入ると気づかれる。だから、そっと近づいて網を投げる。
ところが、この試作で遊んでみると、どんな近づき方をしても、必ず捕まえられることが分かりました。網が速すぎて、気づかれても逃げる前に届いてしまっていたのです。網を遅くすると、「後ろからそっと近づく」がちゃんと得になりました。
試作で遊んでいる間に最初に考えたものとは、まったく違うゲームになりました。 でも、それで良かったと思っています。触らなければ、海に潜る案は出てこなかったからです。
ドット絵を入れる

遊びの形が決まってから、ドット絵を入れました。
今回は、PixelLab.ai という道具で下地を作り、そこに自分で手を入れて描きました。主人公は、何人か作った中でいちばんかわいくできた、白い服の女の子。そこから「海女さん」にしました。因みに海女さんの白い磯着(いそぎ)には、昔からサメよけの意味があると言われているそうです。
魚は、最初は小さく作ったら絵が粗くなったので、ひとまわり大きく作り直しました。画面に入れてみると、今度は海女さんが小さすぎて、1.5倍ほどにしてみました。絵は、画面に置いてみないと分からないことばかりでした。
それでも、絵が入ると、ゲームの印象はまったく変わりました。図形の棒人間だったころとは、別のゲームです。
ここで大事だったのは、遊びが決まってから絵を入れたことです。先に絵を作ると、遊びが変わったときに作り直しになります。これは、前の作品で何度も経験しました。
ゲームの要素を足していく
サメ

魚を捕るだけでは、緊張感がありませんでした。そこで、サメを入れました。
最初のサメは遅すぎて、近くを泳いでも一度も捕まりませんでした。でも、速くすると、見つかった時点でもう逃げられません。
そこで、サメを速くするのはやめて、泳ぐことに危険を持たせました。
サメが一度こちらに気づくと、泳いだときの波紋を聞きつけて、一気に向かってくる。 だから、気づかれたら、泳がずにじっとしているのが正解。サメは見当違いの場所を調べて、あきらめて離れていきます。本物のサメも、水の振動で獲物の居場所を感じ取るそうです。
いちばん緊張する場面が、いちばん静かな場面になりました。
魚の種類と、桶
魚は、群れで泳ぐ小魚、なかなか捕れない珍しい魚などを足しました。
捕った魚は、水面に浮かべた桶(おけ)に入れられます。桶に入れた魚は、サメに捕まっても取られません。本物の海女さんも、浮き桶を縄で体につないで潜るそうです。桶に戻って守るか、もう1匹狙うか。 ここで迷うのが、遊びの面白いところです。
友だちの魚と、3分

1回の遊びは3分にしました。時間の決まりがないころ、子どもに遊んでもらったら「どうなったら終わるの?」と聞かれたからです。
もう1つ、人懐っこい魚を入れました。海女さんが泳ぐのをやめて待っていると、向こうから寄ってきます。触れると友だちになって、しばらく後ろをついてきます。これがとてもかわいい。
ついてくるだけだと物足りないので泳ぐスピードをアップさせました。
ただ、3分の決まりがあると、じっと待つ時間がもったいなく感じます。そこで、友だちになると、残り時間が10秒増えるようにしました。待った時間が、ちゃんと戻ってきます。
効果音とタイトル画面を作る
効果音を入れて、最後にタイトル画面を作りました。
今回は初めて、絵で見せるタイトル画面にしました。水面から顔を出して笑う海女さんと、水の中で見上げる相棒の魚。名前と絵だけで、何をするゲームで、誰が味方か分かるようにしたかったのです。
自分では、とても気に入っていました。ところが、ほかの人に見てもらうと、「女の子の胴体がなくて怖い」と言われてしまいました。
水の中の体を、下へいくほど透けて消えるように描いていたので、初めて見る人には、胸から下が無いように見えたのです。作った自分は「水に浸かっている」と分かって見ているので、気づけませんでした。
こちらについては腰まで描き直して、水の中でも体が続いて見えるようにしました。いまのタイトル画面は、自分でも「これで大丈夫」と思える形になっています。
遊んでみてください
スマホの方は、別のタブで開いてから横向きにしてください。
横長の画面なので、パソコンやタブレットで遊ぶのがおすすめです。
タップでひと泳ぎ、引いて離すと網を投げます。サメに気づかれたら、泳がずにじっと。人懐っこい魚に会えたら、ぜひ触ってみてください。
公開する ── そして、公開したあとにも
X に投稿すると、遊んでくれた方が、結果の画面を載せてくれました。とても嬉しかったです。
ただ、その画面をよく見ると、文字が重なっていました。 「自己ベスト 59点」の後ろに、「自己ベスト更新!」がかぶっていたのです。自分の画面では、一度も重なったことがありません。
調べてみると、パソコンやスマホによって、入っている文字の形(書体)が違い、同じ言葉でも幅が変わるのが原因でした。自分の書体は幅が狭く、ほかの機械の書体は少し広かったのです。
書体をゲームと一緒に置いて、どの機械でも同じ形で出るように直しました。公開したあとにも、気づくことがある。 これも、作り方の一部なのだと思います。
順番が決まると、迷わなくなる

11本作ってきて、いちばん変わったのは、迷う時間が減ったことです。
今どの段にいるのかが分かるので、次に何をすればいいかが分かります。試作の段階なら、絵のことは考えなくていい。絵の段階なら、遊びのことは決まっている。
そして、どのゲーム作でも同じことを繰り返していました。
触ってみる。気づく。直す。
宇宙が水の中になり、矢が網になり、遅いサメが「泳ぐとばれる」サメになり、胴体のない女の子が腰まで描かれた。どれも、触って、見てもらって、気づいたことから生まれました。
1本目のゲームには、画像が1枚もありませんでした。11本目では、自分で手を入れたドット絵の海女さんが、海の中を泳いでいます。
次の作品も、この順番で作ってみようと思います。
