12本目のゲーム「おひっこし」を公開しました。
カルガモのヒナが、シャボン玉や風船に「ぼよーん」と乗りついで、はぐれた兄弟を助けながら、お母さんのところへ帰るゲームです。公園、田舎道、川沿いの3つの道のりを進みます。
これまで作ってきたのは、1つの画面で遊ぶ小さなミニゲームでした。今回は、面が3つになり、絵も音も、これまでよりずっと多くなりました。大きなゲームを作って、初めて気づいたことがたくさんあったので、それを書いてみます。
いちばん小さな試作から

今回も、いちばん小さな試作から始めました。
最初の形は、とても単純です。画面を押している間だけ、主人公が羽ばたいて少し浮きます。下には、子どもたちが吹いたシャボン玉が浮かんでいて、上に乗ると「ぼよーん」と跳ね上がります。それだけです。
羽ばたける力には限りがあって、それを棒で見えるようにしました。棒はゆっくり減っていくので、急いで押す必要はありません。反射神経ではなく、どのシャボン玉に乗るかを考える遊びにしたかったからです。
主人公は、ドラゴンや宇宙船なども考えましたが、最後はまだ飛べないカルガモのヒナにしました。小さな羽をぱたぱたさせても、少ししか浮けない。だからシャボン玉を頼りにする。理由が自然に通ります。
触ってみると、ふわっと跳ねる感じが心地よく、このまま進めることにしました。
1分で終わってしまう
遊べる形にはなりましたが、簡単すぎて、どこを通っても同じような結果になります。
そこで、シャボン玉の中に閉じ込められた兄弟を、公園のあちこちに浮かべてみました。助けると、後ろに一列に並んでついてきます。地面に落ちると、いちばん後ろの兄弟が驚いて、はぐれてしまいます。たくさん連れているほど、そっと飛ぶことにしてみました。
それでも、遊んでみると1分ほどで終わってしまいました。1回遊べば終わり、という感じです。
そこで思い出したのが、ニュースでおなじみのカルガモの親子のお引っ越しです。ビルの池から、道を渡って、お堀まで。いくつもの場所を通って引っ越していきます。それをそのまま、面にしました。
- 1面 公園:子どもたちが吹くシャボン玉に乗る
- 2面 田舎道:お巡りさんがパトカーから放してくれる風船に乗る
- 3面 川沿い:散歩している人の、考えごとの雲に乗る
1面と2面で5羽ずつ、あわせて10羽の兄弟を助けて、3面ではその兄弟を守りながら、お母さんのところへ帰ります。取り損ねた兄弟を迎えに戻れるようにして、そのかわり日が暮れるまでに帰る決まりを足しました。
散歩道から生まれた3面

3面の川沿いは、机の前ではなく、いつもの散歩道を歩きながら考えました。
川沿いの道でよく見かけるのは、ウォーキングやジョギングをしている人、犬の散歩をしている人、釣りをしている人です。鳥も多く、カラスもいます。
歩きながら、ふと思いました。歩いている人は、たいてい何かを考えています。私も散歩しながら、「どんなゲームを作ろうかな」「帰ったら何をしようかな」「将来こんなふうになりたいな」と、頭の中で空想しています。
そこで、3面の足場は、散歩している人の頭から出る、考えごとの雲にしました。漫画でよく見る、もくもくした吹き出しです。雲の中には、おにぎり、ゲーム機、星、おうちなど、小さな絵が浮かんでいます。ヒナは、知らない誰かの考えごとに乗って、家へ帰っていきます。
ほかにも、川から跳ねる魚、横から吹く川風、遊びたくて跳びついてくるワンちゃんを入れました。どれも、散歩道で実際に見たものです。
規模が大きくなって、初めて出会ったこと

面が3つになると、作るものの量が一気に増えました。
| これまでのミニゲーム | おひっこし | |
|---|---|---|
| 面 | 1つ | 3つ |
| 効果音 | 5種類ほど | 18種類 |
| ドット絵 | 数十枚 | 200枚以上 |
量が増えただけではありません。小さなゲームでは出会わなかった問題に、いくつも出会いました。
面ごとに、難しさが違う
3つの面は、それぞれ足場も危ない物にも違いがあります。ある面はちょうど良いのに、別の面は簡単すぎる、ということが起きました。
たとえば3面では、空の高いところにいれば、魚にも犬にも届かず、ほとんど安全でした。そこで、空の高いところでもカラスに当たるようにして、高いところにも危なさを置きました。
たくさんの音を、聞き分けられるようにする
効果音が増えると、似た音がぶつかります。兄弟を助けたときの「ぴよ!」と、お巡りさんの笛の「ピピーッ」が、同じような高さで鳴っていて、紛れそうでした。
また、いちばん大事な「ぼよーん」の音が低すぎて、タブレットやスマホの小さなスピーカーでは、ほとんど聞こえないことも分かりました。どちらも、音を作り直しました。今回は、Claude と一緒に作った効果音も使っています。
遊んでくれた人からのアドバイス
途中の様子を X に載せたところ、こんなアドバイスをいただきました。
ヒナの行列は、親が一定の距離を進むごとに位置を記録して、k羽目を k個前の点に置くと、向きを変えても等間隔で並ぶ
それまでは、時間で遅らせてついてこさせていたので、急に羽ばたくと間隔が広がっていました。教えてもらったとおり進んだ距離で並べるようにすると、兄弟どうしの間隔のばらつきがほとんどなくなり、きれいな一列になりました。※アドバイスをありがとうございます。
優しさを守ったこと

危ないものを足していくうちに、気をつけたことがあります。このゲームの優しさを、壊さないことです。
どの面でも、ヒナが落ちると、誰かが助けてくれます。
- 公園では、子どもたちが「つかまえた!」と抱っこして、そっと空へ放してくれる
- 田舎道では、お巡りさんがパトカーを止めて、拾い上げて、屋根に乗せてくれる
- 川沿いでは、釣りの人がタモ網ですくい上げてくれる
最初は、カラスがヒナをくわえて連れて行ってしまう案もありました。でも、それは残酷なのでやめました。カラスに当たっても、羽ばたく力が減るだけです。
時間内に帰れなかったときも、責めるような終わり方にはしていません。「おそいから、おかあさんが むかえに来たよ」と、お母さんが飛んできてくれます。
作り方の順番は、大きなゲームでも使えた
前の作品「そろり」の記事で、11本作って見えてきた作り方の順番を書きました。今回、規模が大きくなっても、その順番がそのまま使えました。
- いちばん小さな試作を作って、触ってみる
- ゲームの要素を足していく(兄弟、子どもたち、カラス、3つの面)
- ドット絵を入れる
- 効果音とタイトル画面を作る
- 公開する
前の作品と少し違うのは、ドット絵を入れる前に、3つの面の遊びを全部決めたことです。面が3つあると、絵の数がとても多くなります。遊びが変わるたびに絵を描き直していたら、とても間に合いません。図形のままで3つの面を遊べるようにしてから、絵を描き始めました。
どの段でも、やっていることは同じでした。触ってみる。気づく。直す。 ゲームが大きくなっても、それは変わりませんでした。
遊んでみてください
スマホの方は、別のタブで開いてから横向きにしてください。
横長の画面なので、パソコンやタブレットで遊ぶのがおすすめです。
押しているあいだ、ヒナが羽ばたきます。ヒナより右を押すと右へ、左を押すと左へ進みます。シャボン玉や風船に乗ると、ぼよーんと跳ねて、羽ばたく力が元に戻ります。はぐれた兄弟を助けて、みんなでお母さんのところへ帰りましょう。
おわりに

大きなゲームを作ってみて、いちばん感じたのは、作るものが増えると、考えることも増えるということです。面ごとの難しさ、たくさんの音の聞き分け、200枚を超える絵の大きさや向きをそろえること。どれも、小さなミニゲームでは出会わなかったことでした。
それでも、ひとつずつ触って、気づいて、直していけば、ちゃんと形になりました。途中で X にアドバイスをくださった方、遊んで感想をくださった方にも、助けてもらいました。
カルガモのヒナが、子どもたちやお巡りさん、散歩している人たちに見守られながら、兄弟を連れてお母さんのところへ帰る。そんな、ほんわかした帰り道を楽しんでもらえたら嬉しいです。
